研究課題/領域番号 |
09554045
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 啓介 東京工業大学, 理学部, 教授 (90162940)
|
研究分担者 |
藤本 克巳 三共(株), 活性物質研究所, 副主任研究員(研究職
大森 建 東京工業大学, 理学部, 助手 (50282819)
松本 隆司 東京工業大学, 理学部, 助教授 (70212222)
|
キーワード | 抗生物質 / 全合成 / 転位反応 / 立体選択的反応 |
研究概要 |
フラキノシン類は放線菌の代謝物産として見出された殺細胞性の抗生物質である。その合成にあたっては、三連続不斉中心の立体選択的構築、多置換芳香族骨格の位置選択的構築、さらに立体的障害のある芳香族、脂肪族部分の結合等の問題がある。先に我々は、これらの問題に一応の解決法を見出し、(±)-フラキノシンDの全合成を報告した。 本年度の研究では、フラキノシン類の光学活性体の合成、ならびに各種誘導体の合成を可能ならしめる一般的合成経路の開発を目指し検討を加えた。すなわち、先のラセミ体の全合成で得られた知見を基礎とし、フラキノシン類の不斉全合成に必要となるアセチレンアルコール中間体の不斉合成を検討した。その結果、Sharpless不斉エポキシ化反応によって得られる光学活性なエポキシアルコールを出発物質とし、アルキン-コバルト錯体の特性を用いた還元的1,2転位を利用して、上記アセチレンアルコールをエナンチオ、ジアステレオ選択的に合成した。次にこの化合物と六置換ヨードベンゼンを結合させた後、環化によるフラノナフタレン骨格の構築を行った。さらに中間体のアルデヒドに対するメチレン化反応において高い選択性で三連続不斉中心を構築する反応系を見出し、その立体選択性の起源に関し興味ある知見を得た。こうして得られた立体配置の定まったエポキシドに対して側鎖部に対応する四炭素の導入を行いフラキノシンDの不斉全合成を達成した。なお、最終段階のキノンへの酸化では、あらかじめC(9)位の水酸基を遊離しておくことにより、オルトキノンを副生することなく、目的のパラキノンのみを選択的に得ることができることを見出した。 今後、これらの知見を活かし、他の類縁体ならびに非天然類縁体の合成を検討し随時その活性評価を行う予定である。
|