研究概要 |
抗真菌性ポリエンマクロリド・FilipinIIIの全合成研究に関して、平成9年度の研究計画は、その基盤反応と手法の確立であった。フィリピンIIIには数多くの水酸基があり、その基の不斉点が1,3-ジオールの関係で連続しているが、このポリオールの新しい不斉合成に関して重要な進展があった。キラルオキサザボロリジノン不斉アルドール反応を連続使用することで、その相対配置をコントロールしてポリオールが簡便に合成された。さらにその反応は現在環境汚染の問題の一ツとなっているジクロロメタン溶媒中で進行するものであったが、今回THF溶媒でその反応のすべての選択性を低下させることなく進行させることに成功した。また触媒のB-H結合をB-Cl結合に変えることで、反応は触媒条件下で使用することができるまでに改善された。この一層効率的になった不斉アルドール反応を用いて、不斉点が7ケ互に1,3の関係で関連する1,3ポリオールの合成が完了した。このことにより、フィリピンIII全合成のためのポリオール部分の合成のための方法論が確立された。
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