研究概要 |
本年度得られた成果の概要は以下の通りである。 1.アジド化合物の新規還元的Boc化反応の開発:我々が以前報告しているN-Bocラクタムの高圧縮合反応(Tetrahedron Lett.,1992,33,4945)に関連して、アジド化合物の新規還元的Boc化反応の開発に成功した。本反応は、程々のアミノ酸誘導体との縮合によるペプチド化合物を簡便に合成するための基本反応となりうる。 2.β-ケトエステル類の高圧条件下でのMichael付加反応:β-ケトエステル類とメチルビニルケトンあるいはアクリル酸エステル等とのMichael付加反応について、Yb(OTf)3触媒を用いる系を検討した。その結果、高圧条件あるいはシリカゲル吸着条件のいずれかの条件を使い分けることによる反応の促進効果を明らかにした。 3.エポキシ化合物と種々の複素環化合物との縮合反応:我々は以前、インドールやピラゾールのような含窒素複素環化合物との縮合反応が高圧条件下有効に進むことを報告している。この延長として、フランあるいはチオフェン誘導体についても検討し、この場合LiClO4のようなルイス酸が有効にはたらくことを見つけた。本反応の、ポルフィリン関連物質合成への応用については現在検討中である。 4,アミジン類の縮合反応を基軸とするキナゾリン化合物の新規合成:アミジン類とo-フルオロベンズアルデヒド誘導体との高圧縮合反応を基軸とする、キナゾリン関連液晶材料の合成を検討した。その結果、高圧下では複雑な混合物を与えるだけであったが、常圧下モレキュラーシ-ブズを共存させることによって高収率で目的化合物を得ることに成功した。本反応は、種々の有機機能性材料の合成に有用性が高いものと考えている。 5.無機材料の高圧縮合テンプレート化:無機材料に吸着させた血清アルブミンに有機低分子化合物を混在させ、高圧条件下で反応を行うことによって、アルブミン分子への低分子テンプレート化に成功した。反応物をステンレス管に充填し、水/メタノールを移動相としてカラム評価を行った結果、テンプレート形成反応に用いた分子を選択的に保持し、その効果をクロマトグラフ的に実証した。
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