研究概要 |
本年度得られた成果の概要は以下の通りである。 1. N-Bocカルボキシアミド化合物の新規脱Boc化反応の開発: 我々が以前報告している、N-Bocラクタムの高圧縮合反応(Tetrahedron Lett.,1992,33,4945)に関連して、シリカゲル吸着Yb(OYf)3触媒を用いる無溶媒下でのN-Bocカルボキシアミド化合物の新規脱Boc化反応の開発に成功した。本反応は、極めて高い官能基選択的を有し、合成化学的にも優れている。 2. β-ケトエステル類の無溶媒条件下でのMichael付加反応: 我々が以前報告したβ-ケトエステル類と種々のMichaelアクセプターとのYb(OTf)3触媒存在下でのMichael付加反応(Tetrahedron Lett.,1997,38,7583)に関連して、TfOH触媒を用いる新規な反応系を開発した。すなわち、アクリル酸エステルをアクセプターとして用いる場合、無溶媒条件を用いるのが極めて有効である。 3. β-ケトエステル類の高圧条件下でのHomo-Michael付加反応: (2)の研究に関連して、活性化シクロプロパン類とβ-ケトエステル類とのHomo-Michael付加反応が、Yb(OTf)3触媒存在下、高圧反応条件を用いて行うときれいに進むことを見つけた。この場合、特にシクロプロパンジカルボン酸ジエステルをアクセプターとすることが有効である。 4. エポキシ化合物と種々の複素環化合物との縮合反応: 我々は以前、インドールやピラゾールのような含窒素複素環化合物との縮合反応が高圧条件下有効に進むことを報告している。この延長として、フランあるいはチオフェン誘導体についても検討し、この場合LiClO4のようなルイス酸が有効にはたらくことを見つけた。 5. 天然物合成への応用: 我々は以前、N-Bocラクタム類の高圧縮合反応(Tetrahedron Lett.,1992,33,4945)を基軸とする抗潰瘍性天然物AI-77-Bの合成研究を報告している。今回、その最終段階を高圧反応を用いて行うと、目的とする反応は全く進まず、アミノイソクマリン化合物の異性化のみが優先することを見つけた。この知見は、AI-77-B全合成における重要な指針となった。
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