研究概要 |
非水溶液のpH測定の必要性が近年増加しているが,pHセンサーとして通常用いられるガラス電極は非水溶液中での応答が非常に遅い欠点がある。本研究は,非水溶液のpH測定に関するこの状況を解決するため,研究代表者の伊豆津が研究分担者伊藤(pH-ISFETの製作担当)及び加藤(酸化イリジウムpHセンサーの製作担当)と協力して,非水溶液用の新規で高性能なpHセンサーを製作し,実用化することを企画したものである。平成9,10年度の研究で,(1)窒化珪素(Si_3N_4)型及び酸化タンタル(Ta_2O_5)型pH-ISFETと酸化イリジウム(IrO_2)pHセンサーの非水溶液における性能(迅速・確実な応答性・容易な操作性・優れた耐溶媒性)を向上させるために,センサーの感応素子,支持材料,構造などを改良し,多くの有機溶媒中で6ヶ月以上使用可能なセンサーを作ることができた。(2)それらは多くの溶媒中でほぼネルンスト応答し,応答速度はSi_3N_4型ISFET>Ta_2O_5型ISFET.IrO_2-センサ≫ガラス電極で,Si_3N_4型ISFETの場合には攪拌による溶液の混合(〜1秒)が律速となるほど速かった。またpH-ISFETの応答は酸化剤・還元剤の影響を受けなかった。(3)Si_3N_4型ISFETでは約10秒でほぼ完全な滴定曲線を得ることができ(ガラス電極では1時間以上必要),迅速滴定への有用性が実証できた。(4)迅速測定を要する酸塩基平衡の研究にpH-ISFETを用い,良好な結果を得た。(5)IUPACが推奨するpH標準液が非プロトン性の純溶媒・水混合溶媒で緩衝作用を失うことをpH-ISFETを用いて示した。現在,これらのpHセンサーを用いるpH測定法のマニュアルを作成中である。
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