1) 現有の原子間力顕微鏡の超高感度化 原子間力とトンネル電流を同時測定するためには、原子間力の測定領域を表面から遠ざけねばならず、より微弱な力勾配の変化を検出する必要がある。そこで、超高感度な変位検出系と超高感度な周波数変調回路を実現した。 2) 清浄で先鋭な導電性探針の実現 力を検出する原子間力顕微鏡の探針は、導電性のシリコンでできているが、その表面は絶縁体の自然酸化膜に覆われている。そこで、現有の超高真空装置にアルゴン・イオン銃を付加し、先鋭な導電性探針を実現できるようにした。 3) 原子分解能で力とトンネル電流を同時測定するための観察条件の理論的検討 トンネル電圧を印加した状態で、原子間力の単原子観察に必要なバネ定数の大きさについて理論的に検討した。その結果、バネ定数の大きさとして30N/mが必要であることを理論的に明らかにした。 4) 原子分解能で力とトンネル電流を同時測定するための観察条件の実験的検討 劈開により簡単に清浄表面が得られるガリウムヒ素やインジウム燐のような化合物半導体の劈開面を試料として取り上げ、探針に働く引力勾配とトンネル電流の同時測定を行った。その際、探針と試料との間の距離、バイアス電圧などを変化させながら測定を行い、引力領域で単原子観察可能な領域と引力勾配の大きさを実験的に検討した。 5) 原子間力と静電気力とを分離するための新しい方式の考案 従来、原子間力とトンネル電圧印加に伴う静電気力とは、交流変調法を用いて分離されてきたが、両者にはクロストークが存在する事が判明した。そこで、分離度を向上させるために、交流変調法に時分割法を併用した方式を新たに考案した。また、そのための測定回路系を開発し、原子間力とと静電気力とを完全分離できることを実証した。
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