研究概要 |
本研究は,録音ろう管に金属メッキを施すことにより作成された金属製の型であるネガティブから,レーザー光を用いて非接触により音声を再生する手法および装置を開発することを目的としている.19世紀末から20世紀半ばにかけて録音された世界の民族音楽を記録した貴重なネガティブ管がドイツに大量に保存されていることが最近明らかとなっており,本研究で開発する装置はそのような貴重な音声資料の活用に道を開くことを可能にする.今年度は,昨年度に試作した装置をさらに改良し,装置の特性の向上を行った. 1. 照射・検出光学系の小型化・高性能化 光源に可視領域の半導体レーザーを用いることにより,ネガティブ管に挿入する光学ヘッドの小型化を行った.また,管内部での散乱光が光検出器に混入するのを防ぐため,レンズとピンホールからなるリレー光学系を挿入した.これにより,蛍光灯などの室内照明下でも安定した音声再生が可能となった. 2. 回転駆動システムの改良 回転駆動系の材質および加工精度を改善し,昨年度作成したネガティブの回転駆動系に残っていた機械的な問題点を解決した.これにより,ネガティブ管を安定した速度で回転させることが可能となった. 3. トラッキング法の改良 レーザービームによる管内面の音声トラックの追尾法として,ネガティブを一定速度で軸方向に駆動する定速トラッキングに加えて,音声トラックからのレーザービームのずれ量を検出してそれを補正することによりトラックを行う自動トラッキングを導入した.これにより,より安定したトラッキングが可能となった. 4. 再生装置の総合特性の改良 以上の改良した各システムを結合し,制御装置の回路パラメータを最適化することにより,全体の動作の安定化と再生音声の改善を図った.
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