研究概要 |
我々は、従来の原子蛍光分析装置の試料原子化(アトマイザー)にアブレーションを利用することを試み、この方法をLaser Ablation Atomic Fluorescence(LAAF)分光法と名付けた。LAAF分光法はあらゆる元素分析法の中で最も検知感度の高い方法である。本研究はこのLAAF分光法を固体表面分析を適用し、特定元素の深さ方向の分布をサブナノメーターの分解能で高感度に検知することを目的とする。 その方法は減圧(〜1Torr)下で試料表面を繰り返し紫外エキシマーレーザーでアブレートし、そのブルーム中に特定元素の共鳴線に同調した可変波長レーザー光をプローブとして入射し、LIFを観測することによって、深さ方向に分布する元素の密度分析を測定しようとするものである。 2年間にわたり行った研究成果をまとめると、以下の通りである。 1. ガラス,ポリマー,金属,半導体などの各種材料にレーザー光を照射し、そのフルエンスを精密に制御することで、ショット当りナノ,サブナノオーダーの極薄アブレーションを試みた。その結果短波長のArFレーザー照射時にガラスやポリマーではショット当たり1nm以下の均一なアブレーションが可能なことを明らかにした。 2. ガラス,ポリマーでNa分のLAAF検知を行い、そのような極薄アブレーション時にもショット毎に信号が得られることを示した。 3. さらにNa濃度の分布がわかっているPMMA試料を作成し、元素の検知下限、深さ方向の分解能などの評価を行い、この方法の有効性を明らかにした。 4. ナノ秒レーザーでは均一なアブレーションができなかったシリコンも、フェムト秒レーザーでは均一に削れることがわかった。
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