本研究の目的は、これまで開発してきた移相子付き波長可変型X線ボラリメータに高分解能CCD型X線検出器を組み合わせたX線偏光顕微鏡を開発し、X線波長領域における物質の誘電率異方性の空間分布を観測することである。本年度は、X線偏光顕微鏡の実現に向けて不可欠である結晶拡大器付き高分解能CCD型X線2次元検出器の開発と性能評価を行った。先ず、拡大光学レンズとCCD撮像素子で構成されるCCD型2次元検出器の空間分解能評価を行った。すべてのレンズ倍率(×2.5、×5、×10、×20)について空間分解能はCCD撮像素子上で約2.3ピクセルであり、倍率を上げた分だけ実像の空間分解能が向上した。従って、拡大光学レンズによる空間分解能の低下はないということがこの実験からわかった。次に、このCCD型2次元検出器にX線蛍光体を組み合わせたCCD型X線検出器を開発し、空間分解能評価を行った。CCD型X線検出器の開発においてX線蛍光体は空間分解能低下の最大の要因となる。そこで我々は、発光効率、発光不均一性、空間分解能を最適化するために蛍光体の材質、厚さ、塗布方法、塗布する基板などの観点から蛍光体の選定を行った。予備的実験を通して、現在の段階では、3mmのガラス基板に厚さ10μmで沈殿塗布したGd202S:Tb(P-43)が、拡大光学レンズのレンズ倍率が×10で、空間分解能は7.9μm、発光効率、発光不均一性の面からも最適であると結論した。さらに、CCD型X線検出器に非対称反射型Si(III)完全結晶によるX線像拡大機能を組み合わせたX線検出システムの開発とその空間分解能評価を行った。その結果、結晶拡大率を上げるにしたがって、空間分解能が約1.3μmまで向上した。我々は現在、さらに最適な蛍光体の選定をしつつ、この結晶拡大器付き高分解能CCD型X線2次元検出器のX線偏光顕微鏡への応用を進めている。
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