X線領域における偏光顕微像を観察できるX線偏光顕微鏡を開発し、物質の直線二色性(LD)、円二色性(CD)、直線服屈折(LB)、円服屈折(CB)をイメージングすることが本研究の目的である。X線を用いたX線偏光顕微鏡を実現すれば、可視光偏光顕微鏡では観察することのできないエネルギー領域での物質のミクロ構造の異方性を観察することができ、広い分野で応用され得る有用な測定手段となると考えられる。本研究は、(1)高分解能CCD型X線検出器の開発、(2)X線自然直線二色性(NLD)偏光コントラストの観測、(3)X線磁気円二色性(MCD)偏光コントラストの観測、の3つの段階に分けて進めた。 (1)X線偏光顕微鏡の検出器部分である高分解能CCD型X線検出器の開発を行った。その際に、空間分解能を決める大きな要因となるX線蛍光体について、発光効率、発光の場所的不均一性、空間分解能の特性を最適化するために蛍光体の材質、厚さ、塗布方法、塗布する基板などの条件を変えて約30種類の蛍光体の性能評価を行った。その結果、ガラス基板に厚さ10μmで沈殿塗布したGd_2O_2S:Tb(P-43)で、8μmの空間分解能が得られた。さらに、CCD型X線検出器に非対称反射型Si(lll)完全結晶によるX線像拡大機能を組み合わせた結晶拡大器付き高分解能CCD型X線検出器を開発し、空間分解能を1.2μmまで向上させた。 (2)(1)で開発した高分解能CCD型X線検出器を移相子付き波長可変型X線ポラリメーターに組み合わせて、コバルト単結晶のX線自然直線二色性(NLD)偏光コントラストの観測に成功した。この偏光コントラストは、結晶の異方性による吸収率の差をコントラストにしたもので、この波長領域では、世界で初めてのことである。 (3)コバルト多結晶のX線磁気円二色性(MCD)偏光コントラストの初めて観測した。
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