本研究の目的は、過去一般研究や試験研究として補助を受けた一連の能動型画像処理に関する研究をベースにして、傾斜動的ホローコーン照明と8の字型フィルタリング処理を利用した無収差焦点深度拡大位相差顕微鏡を試作、その実用性を評価するとともに、マルチスペクトル分光顕微鏡として動作できることを確認する所にある。 この目的に添って、平成9年度にはまず以前の科研費補助金にて購入した光学顕微鏡をベースにして傾斜動的ホローコーン照明部を追加するとともに、照明部制御プログラムと外部ワークステーション上での処理プログラムならびにネットワーク関連のプログラム作成を行った。この結果、無収差焦点深度拡大位相差顕微鏡としての基本仕様を満たしていることを確認した。生物試料を含む何種類かの試料観察を通じて、実用性ありと判断している。一方光源に白色光源を用いた場合には、外部ワークステーション上での8の字型フィルターの段階で半径を変えることによりマルチスペクトル観察が出来るはずである。 平成10年度においてはまず傾斜動的ホローコーン照明法と8の字型フィルタリング処理による無収差結像法の基礎理論を確立、公表した。本方式により、焦点深度を拡大できるとともに、主及び高次球面収差やコマ収差の影響を避ける事が可能である。一方実験面では高輝度白熱ランプを使用して、2色染色試料などの観察をおこなったが、目下充分なスペクトル分解顕微鏡像を得るには至っていない。その主原因は観察像中の非線型結像成分の影響、及び低空間周波数部分のスペクトル抽出域の重なりによると考えられる。前者は中、高領域、後者は低空間周波数領域のスペクトル分解能を低下させる。目下これらの解析と対策とを継続して検討中である。また透過型電子顕微鏡への適用は本研究の一部であるが、共同研究者側のマシンタイムの制約により次年度以降予備実験を行う予定である。
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