本研究の目的は、加重結合容量バックギャモン法による2次元位置有感イオン・電子検出器の最適設計法を確立し、さらに、これと光電変換面を組み合わせて、従来に無い高時間分解能・高2次元位置分解能の計数型光子検出器を開発することである。以下、本年度の研究の柱ごとにその成果をまとめる。 (1) MBWCアノード+MCPの2次元電子検出器としての性能試験。従来のNIM-CAMACベースの信号処理系では、ナノ秒オーダーの時間分解能に対応する事はできない。そこで昨年に引き続き、高速デジタルオシロスコープを主体とする計測系の開発と、それに基づいて線形性や位置分解能を最適化するデータ処理法の研究を進めた。現在、旧システムとほぼ同等の諸性能が得られる見通しとなっている。 (2) 光子計数管、及び試験のための光学系の設計と製作。本研究の目的のためには、独自に光電面を製作する技術を保有する必要がある。そこで、比較的容易と思われる紫外線用光電面(CsI)を用いてまず光子検出器の最適化の研究を進め、平行して可視用光電面の製作技術の確立を進める事とした。それぞれのための新しい真空槽を製作する事とし、それらは現在ほぼ完成している。前者の真空槽は、光電面製作のための蒸着装置部分と、サファイヤ窓を備えた検出器部分から成り、作成した光電面は直線導入機によりMCP前面に移送され、それと一体となって光子検出器を構成する構造となっている。テスト用光源は重水素ランプを使用する。一方後者は、光電面の製作と特性試験という目的に限定した構造となっている。 (3) 光子検出器の特性テスト。現在、上記のシステムにより、光子検出器総体としての特性の研究を進めている所である。
|