2次元位置有感光子検出器の位置検出部となる荷重結合容量バックギャモン法の特性について、まず詳細に検討した。位置分解能に影響する諸要因を実験的、理論的に調べた結果、容量結合部の材質や負荷抵抗、各部の結合容量値などの選択における実践的指針が得られた。位置検出原理の理想的過程からの現実のシステムの外れの影響について検討し、画像への影響は主に線形な縮小効果であり、深刻な問題とはならない事が明らかとなった。その他製作の容易さなど、他の従来技術に勝る多くの利点が明らかになった。単純な容量結合網モデルを用いてMBWC法にもとづくアノードの動作を解析し、その最適設計法が明らかになった。また、これをマイクロチャンネルプレートと組み合わせ、光子検出器の電子増倍部分となる2次元位置有感荷電粒子検出器を構成する際に問題となる諸要因の解明もあわせて進め、10数μmの位置分解能を現実のものとする上で不可欠の多くの知見を得た。また、ナノ秒領域での信号処理のあり方についての基礎データを得ると共に実用性を持った、高速デジタルオシロスコープを主体とする新しいデータ収集系を構築した。これらに基づき、UV光子検出器の製作とそのテストを行える真空チェンバーを設計し、これを完成させた。今後の展望としては、有感部の感度(量子効率)の一様性や、位置分解能、線形性、時間特性などの検出器の諸特性のさらなる研究、波長領域の可視への延長、より取り扱いの容易な電子増倍部の検討が上げられる。
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