研究概要 |
これまで種々のアルコールおよび水素分子に対するSnO_2ガスセンサの過渡応答および定常応答特性を調べ,臭い分子自身の分極率や超分極率の違いによってセンサの応答が異なること,およびこのことを利用した臭いの識別が可能であることを明らかにしてきた。臭いやガスの種類によるセンサ応答の違いの機構をさらに詳しく調べるため,平成11年度は主として計算機上でSnO_2クラスター表面と種々のガス分子との反応過程のシミュレーションを行った。計算手法としては,計算時間が短く比較的精度の高いと言われている半経験的分子軌道法を用いた。作製したクラスター計算から,バルクのSnO_2はルチル構造で,Sn原子の回りを6個のO原子が囲んでいるが,(001)表面では4個の,また(100)表面では5個のOが囲んでいる状態が最も安定であることが示された。求めた安定なSnO_2表面に水素,メタノール,エタノールの分子を接近させたときの系の生成熱を計算し,その反応性を評価した。その結果エタノール分子はSnO_2(100)表面と反応するが,他は反応しないこと,またこれらの分子の分解種であるH,CH_3,CH_3CH_2は(001)表面と反応し,電荷が移動することが示された。またSnO_2表面にO_2分子を吸着させておくと,メタノールは吸着されたO_2分子を介してSnO_2表面と反応することが明らかになった。現在までのところこれらの計算結果は,これまでの実験結果と必ずしも一致していないが,SnO_2センサと臭い分子との反応機構の解明に種々の知見を与えた。今後クラスター構造の最適化,(001),(100)以外の表面との臭い分子との反応等を考慮することにより,シミュレーションをより現実に近づけてゆく予定である。
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