研究概要 |
平成10年度には,高速赤外線サーモグラフィを基礎としたトライボロジ現象のその場計測システムを構築するとともに,これを用いた接触応力分布計測,すべり接触摩耗時の高速温度分布計測に関する検討を行った.これまでに得られた研究成果を以下に示す. (1) 高速赤外線サーモグラフィを基礎に,これに近接拡大光学レンズ,温度分布の高速データ取り込み装置および処理装置を付加し,接触部およびその近傍の温度分布の高速・高精度計測が可能なシステムを完成させた. (2) 接触状態にある二つの物体の一方に赤外線透過材料を用いることにより,接触面の温度分布を赤外線サーモグラフィにより直接その場計測する手法を用いて,すべり接触摩擦・摩耗時の温度分布の計測を行った.まず,PEEK対サファイアのすべり接触摩擦・摩耗状態において,潤滑状態からすべり摩擦,摩耗状態に至る過程において,摩擦係数と接触面の温度分布の関係について調べ,摩擦係数の増大に伴う温度上昇およびPEEKの摩耗による自己潤滑作用を確認した.次に,ベアリング鋼対サファイアのすべり接触摩耗時における接触面の温度分布を,毎秒1200フレームで高速画像計測した.その結果,摩耗が起こっている領域内で,持続時間1/1200秒の瞬間的な発熱を記録し,摩耗時の閃光温度上昇を計測できる可能性があることを確認した. (3) 赤外線透過材料を用いて接触面の熱弾性温度変動を赤外線サーモグラフィにより透過材料越しに計測する,赤外線による接触応力分布その場計測法の精度改善に関する検討を行った.特に,球面対平面のHertz点接触において,変動圧縮負荷の下で接触面積が変化する場合における接触応力分布の計測精度改善手法の開発を行った.その結果,Hertz理論に良く符合する接触応力分布の計測結果を得て,接触応力分布の定量計測を行うことが可能であることを明らかにした.
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