研究概要 |
気中放電加工は工具電極消耗が少なく加工反力が小さいため微細加工に適している.しかし,短絡率が加工条件によっては95%以上に達し,液中加工の10%以下に比べて著しく悪い.短絡の多発は加工速度と加工精度に悪影響を及ぼす.そこで,本年度は短絡率の減少を試み加工速度の向上を目指した。 1)放電加工中の加工ギャップの測定 気中加工の加工ギャップは生じる加工屑の大きさ程度,すなわち10〜20μm程度であり,液中加工の数十〜100μmに比べて狭いことが明かとなった.これが,気中加工において短絡率が高い原因と考えられる. 2)高電圧重畳による短絡率の減少 そこで,短絡率を減少させる手段として500Vの高電圧重畳により比較的広い加工ギャップで加工を行い短絡率の減少を試みた.その結果,通常の重畳電圧(280V)に比べると加工ギャップは広がったものの,短絡率は70%程度までしか減少させることができなかった.しかし,放電1回当りの加工量が増加し加工速度向上には効果があることが分かった. 3)電極送り制御の高速化による短絡率の減少と加工速度の向上 従来の加工機の電極送り制御では狭い加工ギャップに追随できないため短絡が多発していると考えられた.そこで,圧電素子を用いた高い応答性を持つ電極送り機構を従来の加工機の主軸に付加し短絡率の減少を試みた.但し,加工機主軸と圧電素子による高速送り系の協調制御は行っていない.その結果,協調制御を行っていないにも関わらず,比較的長いパルス条件では短絡率が10%以下にまで減少した.それにともなって加工に有効に作用する正常な放電の割合が増加し,その割合に比例して加工速度の著しい向上を達成することができた.
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