研究概要 |
工業的に要求される表面の幾何学的形状では,極めて平滑な面が要求される場合の他に摩擦力軽減の目的から微細凹凸をつけた表面が要求される場合がある.本研究はこのような目的に対し,レーザ光照射でそれを実現できるのではないかと考えて検討したものである. ArFエキシマレーザ光(波長193nm)をエネルギー密度,照射パルス数,照射角度を変えて石英ガラスに照射した.その結果,照射角度が大きくなると照射面にはレーザ光照射方向に走る微細な溝が生成された.溝が形成される条件の1つにエネルギー密度があり,それは4J/cm^2であった.この溝は照射角度が大きくなるに従い互いに整列するようになり,照射角度83度で最も規則性のある微細溝が得られた.これ以上の照射角度では,レーザ光がまでガラスに入らず,いかなる変化も観察されなかった.さらに偏光の影響を調べるため,偏光板を介しての照射を試みたが,微細溝の形状あるいは創成に及ぼす偏光の影響は全く認められなかった. 石英ガラスを中心に実験を行ってきたが,吸光計数の大きいソーダライムガラス,結晶性に着目し水晶とコランダムを選択して同様の照射を行った.その結果,ソーダライムガラスには全く溝が形成されず,水晶のみに同様の溝が形成された.またコランダムには結晶方位に依存する亀裂状の溝が形成された.従って,微細溝の創成にSiO_2組成が大きく影響しているとの結論を得た. このような微細溝の機能性部品への適用を考えて,液晶表示体の液晶配向膜に使われているポリイミドに対し微小溝の形成を試みた. エネルギー密度,照射パルス数,照射角度を変えて照射した.その結果,照射条件によって3種類に大別できる微小凹凸を形成させることができた.3通りとは,ドット形状,照射方向に直角な段差形状,照射方向に平行な溝形状である.とりわけ照射方向に平行な溝形状は,液晶表示体の配向膜のラビング処理による形状に以ているところから,表示体セルを作製し,液晶の配向特性を調べた.その結果,液晶は配向した. ここで得られた結果は,従来ラビングと呼ばれる布で擦る行程をレーザ照射に置き換えられる可能性を提示したものであり,意義あるものと考えている.
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