研究概要 |
本研究では,超高速回転機械,超精密機器などの支持要素として広く用いられている動圧形気体軸受に特有の剛性・減衰能力の不足に対処するために,運転状況に応じて軸受すき間形状を能動的に変化させ得るようなシステムを考案し,これによって急激な荷重変動やすき間変動に対して軸受すき間を十分確保し,しかも振動減衰能の最適化を図って軸受機能を飛躍的に改善することを目的としている. 軸受システムの設計・制作を行う準備として,まず軸受すき間の可変機構の検討を行った.軸受部は圧電アクチュエータを用いた可変形ステップ軸受形式とし,運転状態の急激な変化に対応してステップ高さを能動的に変化させ,振動減衰能の最適化を図って十分な軸受すき間を確保しようとするものである.軸受のパッド枚数=6,パッド弧角=58度,パッド外径30(mm),最大ステップ高さ=10(μm)とした.この軸受部はアタッチメントを介して回転軸系本体に容易に取り付けられるようになっている このシステムにおいて,回転軸は軸振動と伝達出力損失を最小限に抑えるために,ビルトインモータによって駆動され,モータの冷却はハウジングに設けた溝を通して水冷で行うようにする.回転軸はセラミック製アンギュラー玉軸受によってラジアル方向に支えられ,上部玉軸受には定位置予圧機構を,また下部玉軸受には定圧予圧機構を設け,最大60000(rpm)まで連続的に運転できるようになっている.ステ-タ部は静圧空気軸受によって垂直方向に非接触支持され,起動時はワイヤを介して釣り下げる機構になっており,マイクロメータの操作によりロータに接触することなく浮上実験を開始することができる.なお,ステ-タ上部には振動特性を計測するための加振機が取り付けられるようになっている.本年度は基本装置の試作を終了し,固定式のステップ軸受を用いて実験を行い,目標通りの性能を有することを確認した.合わせて,軸受の最適設計を実施し,可動形パッド試作の指針を得た.
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