研究概要 |
高速すべり条件下におけるPTFE系複合材料の摩擦摩耗特性をブロックオンリング型摩擦摩耗試験機を用いて調べた。すべり速度及び荷重は,各々1〜20m/s,98〜1176Nの範囲で変化させた。また,リング試験片の粗さは,円筒研削仕上げにより,0.1μmRaとした。実験は,無潤滑及び油潤滑条件下において行った。また,リング表面下1mm位置に埋め込まれた熱電対を用いて、リング温度を測定した。 得られた結果を要約すると次の通りである。 【1】無潤滑下における摩擦摩耗特性: 複合材料の摩擦係数は,10〜20m/sの範囲では〜0.3でほぼ一定であるが,すべり速度4〜5m/s付近で最大(0.4〜0.45)となる。最大値を取るすべり速度での摩擦面温度は130℃で,複合材料の粘弾性変形抵抗が最大になる温度とほぼ一致する。比摩耗量の値は,概ね(1.5〜3.3)×10^<-6>(mm^3/Nm)の範囲にある。すべり速度が10m/s以上のすべり速度では,複合材料表面が鉄系微細粒子によって被覆されているのが観察された。この鉄系粒子の保護作用により,破局的な摩耗に遷移しないと言える。また、油ぎれを起こしても、金属製の軸受の様な焼き付きにすぐに遷移しないことが示唆された。 【2】油潤滑下における摩擦摩耗特性に及ぼすすべり速度の影響: 広いすべり速度範囲に渡って,安定した摩擦摩耗特性を示した。従来から使用されている金属製の軸受(WJ2)は,15m/s以上の高速下では,油切れを起こして焼き付いた。これより複合材料製のすべり軸受は,WJ2製の軸受よりも優れた摩擦摩耗特性を有していると言える。 以上の研究結果から,複合材料のメンテナンスフリー軸受への応用の可能性が確認された。次年度は,油潤滑下における摩擦摩耗特性に及ぼすリング表面粗さの影響,油潤滑下における摩擦摩耗特性に及ぼす荷重の影響を明らかにする予定である。
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