研究概要 |
PTFE系複合材料の摩擦摩耗特性は温度に非常に敏感である.そこで平成10年度は,リング及び複合材料の摩擦面直下の温度を測定する多点温度測定システムを構築し,温度と摩擦摩耗特性との関係を調べた.すべり速度は,10m/s一定で,荷重を98〜1176Nの範囲で変化させた.リング試験片の粗さは,0.1μ mRa(円筒研削)〜1.8μ mRa(旋削加工)の範囲で変化させた.実験は,油潤滑下で行い,使用潤滑油は無添加タービン油(ISOVG46)である.比較のために,WJ2及び純PTFEも実験した.得られた結果を要約すると次の通りである. 【1】 摩擦摩耗特性に及ぼす相手面粗さの影響: PTFE系複合材料は,相手面粗さが増加しても(良好な油膜が形成されなくても),摩擦係数や比摩耗量はあまり増加せず,最も安定した摩擦摩耗特性を示すことがわかった.この結果から,PTFE系複合材料をすべり軸受として実用化した場合,仮に油ぎれを起こしても,純PTFE軸受やWJ2製軸受の様に直ちに焼き付き(激しい摩耗形態)に遷移しないことが示唆された. 【2】 摩擦摩耗特性に及ぼす荷重の影響: 低荷重域(<600N)においては,摩擦係数は荷重の増加と共に減少したが,高荷重域では増加した.高荷重域では,油煙が発生したが,摩擦係数は0.02〜0.04で比較的低かった.比摩耗量は,荷重の増加と共に増加した.10.2m/s,1200Nの条件下で,摩擦係数は0.02〜0.04,比摩耗量は10^<-6>であった.また,リング温度が100〜150℃に達しても,焼付きは発生しなかった.この事実から,PTFE系複合材料は,油膜が薄くなっても,油膜の効果がほとんど消失しても,直ちに焼付きに遷移せず,混合潤滑状態を維持する能力が高いと言える. PTFE系複合材料は,実験条件を厳しくしても焼付きの様相を示さず,メンテナンスフリー軸受への応用の可能性が非常に高いと言える.次年度は,汚染物質の影響と試作軸受の性能試験を行う予定である.
|