研究概要 |
平成11年度は,ガラス繊維強化PTFE系複合材料の摩擦摩耗特性を摩耗粒子(潤滑油)分析の観点から検討した.潤滑油分析方法は,発光オイル分析法及び粒子カウンター法の2種類で行った.すべり速度は,10m/s一定で,荷重を98〜1176Nの範囲で変化させた.リング試験片の粗さは,0.1μmRa(円筒研削)〜1.8μmRa(旋削加工)の範囲で変化させた.使用潤滑油は無添加タービン油(ISOVG46)である.比較のために,ガラス繊維及び炭素繊維強化PEEK複合材料の摩擦摩耗特性も調べた.得られた結果を要約すると次の通りである. 【1】摩擦摩耗特性に及ぼす相手面粗さの影響: PTFE系複合材料は,相手面粗さが大きく良好な油膜が形成されなくなると,摩擦係数や比摩耗量はわずかに増加する傾向を示した.これに対して,PEEK材料は,良好な油膜が形成されないと,摩擦摩耗が急増し,相手面粗さ依存性が非常に大きいことがわかった.この結果から,PTFE系複合材料をすべり軸受として実用化した場合,仮に油ぎれを起こしても,直ちに焼き付き(激しい摩耗形態)に遷移しないことが実証された. 【2】摩擦摩耗特性と摩耗粒子分析結果: 摩耗粒子発生量はきわめて少なく,レーザ回折式粒度分布測定装置では,ほとんど検出できなかった.唯一検出されたのは,ガラス繊維強化PTFE複合材と粗いリングの組合せの場合であった.それでも粒径0.4μ程度の小さな粒子が僅かに検出されただけであった.このように,エンジニアリングプラスチックの耐摩耗性が,摩耗粒子分析の観点からも実証された.しかし,リングの摩耗に関しては,ガラス繊維の方が炭素繊維より摩耗が大きかった.その攻撃性は炭素繊維の場合の約2倍である.従って,エンジニアリングプラスチック軸受の潤滑状態の変化や摩耗状態の変化を検出するためには,鉄元素に着目することにより可能である. PTFE系複合材料は,実験条件を厳しくしても焼付きの様相を示さず,また,発生摩耗粒子数も非常に少なく,メンテナンスフリー軸受への応用の可能性が非常に高いと結論付けることができる.
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