研究概要 |
ターボ機械の様々な異常流動現象のうち,ベーンレスディフューザの旋回失速,ベーン付きディフューザの旋回失速,羽根入口逆流に基づく低流量不安定特性(遠心,斜流,軸流),ポンプの旋回キャビテーション,水車のドラフトサージなど,本質的に旋回流れに起因する異常流動現象として,ケーシング壁に圧力勾配の方向に一致するように設けた多数の浅溝の流れによる角運動量欠損作用を利用して異常流動現象を抑制し,振動,騒音,羽根の破損等を防止することが本研究の目的である. 昨年までの研究では,斜流ポンプの揚程曲線の右上がり不安定性能や,羽根なしディフューザの旋回失速を浅構により完全に抑制することを理論的および実験的に示した.本年度は羽根付きディフューザの旋回失速の抑制,ならびに,水車のドラフトザージを防止するために,浅溝を設けた実験装置を用いてその効果について調べた. 羽根つきディフューザの旋回失速の抑制は従来大変困難であったが,溝形状を最適化することによりほぼ完全に抑制することに成功した. 水車ドラフトサージ抑制を検討するための実験装置として,両拡がり角20°および30°の円すいディフューザを使用した.このディフューザに旋回流が流入すると,入口直管部から急激な圧力勾配が生じるため,この入口部ならびにディフューザ部に浅溝を設けることによる旋回流抑制効果を検討した.その結果,ディフューザ出口において最高で約60%の周方向速度の減少が達成され,ドラフトサージの抑制効果が期待できることが分かった.また,設計点で生じる弱い旋回流の場合には,溝による全圧損失は小さく圧力回復係数の低下はわずかであった. 本研究では,ケーシング壁の圧力勾配の方向に設けた簡単な形状の浅溝を用いることにより,ターボ機械に生じる異常流動現象のパッシブコントロールが可能であり,最適な溝形状を用ることで効率を低下させることなく性能不安定を抑制することが可能であることを示した.
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