研究概要 |
1.機構部の構成:減衰可変実験装置は,誘導モータの回転磁極を流用したシャフトをシリンダ内に配置し,すき間に磁性流体を充填して,シャフトから延びる揺動棒の減衰振動をエンコーダで測定するように構成した.シャフトを中心位置で揺動させるため,下端にピボット軸受,上端を転がり軸受けで保持した.接触摩擦損失,渦電流損失などの他の損失要因を分離して減衰可変の大きさを定量化するために,シリンダ材としてアクリル,アルミ,鉄を用い,クリアランスをパラメータとした.本実験装置の構成により減衰可変の評価が可能であることを確認した. 2.基本特性の確認:シャフトに印可する電流とすきま内に発生する磁場の強さの関係,およびすきま内の磁束密度分布と減衰可変効果の関係を明らかにするために有限要素法を用いて磁場解析を行った.ついで,磁性流体の揺動減衰可変特性に及ぼす振幅,周波数,すきまの影響を調べるために,それぞれ初期変位,ばね厚,シリンダの内径を変えて実験を行った.得られた結果を要約すると以下のとおりである. 1)開発された磁性流体の減衰可変効果は,すきま内の全領域において磁場強度が磁性流体の飽和磁束密度を越えても磁場に比例して増加し,飽和磁束密度を10倍以上越える領域まで増加が持続することを明らかにした.これは減衰可変要因として,磁性微粒子の回転に起因する粒子固有の減衰に加えて,クラスタの形成による流動抵抗の増大が寄与しているためと考えられる. 2)磁場の変化に対する減衰係数の変化(減衰可変感度)は,振幅や周波数が大きくなる(剪断速度が大)と減少し,振幅と振動数はほぼ等価に作用するとみなされる.これは磁性流体のビンガム流体としての特性によると考えられる.一方,すきまが小さくなる(剪断速度が大)とわずかに感度が増大する.これはすきまが小さいと,クラスタが強固に形成されるためと考えられる.
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