研究概要 |
この研究で得られた研究成果をまとめると次のようになる. (1) 視覚障害者の眼のみならず,自律走行車および知能ロボットの眼として利用可能なコンパクトかつビデオ速度で出力可能な距離認識装置を開発した.この装置はステレオカラーCCDカメラと簡単な電子回路からなっているにもかかわらず,情景から数種の色彩と輝度の領域を抽出でき,対象物中の3次元情報を連続的に把握することとが可能となった.この測定において,(a)曲面をその表面の色や陰影の違いから小さな平面の集まりへ分割し,(b)各平面の位置を距離取得装置を用いて計測することで,折れ角のある平面の測定と円筒形物体の表面測定に開発した複数の装置を応用できることを実証した. (2) 視覚障害者のための点字ディスプレイを開発しているが,この点字ディスプレイには著者らの開発になるゴム人工筋肉を利用し,ゴム人工筋肉を伸縮するために内部に電気粘性流体(ERF)を圧送する方法を試みている.この圧送を高速化するためには,ER流体の管内における動的挙動を把握する必要があり,かつ何らかの圧送方法を開発する必要がある.ここでは管内の流体の応答特性を電気-流体類推法により定性的に解析できることを表すとともに,電気粘性流体を圧送するためのポンプを開発した.また,これらの駆動原理を用いてERFを圧送し,8×8の点字ディスプレイと制御装置を開発している. (3) 盲導犬ロボットの開発の前段階として,前述の視覚装置を搭載した自律走行車を開発した.これは,カラーステレオカメラからの映像信号を実時間で処理する視覚装置を装備し,色標識を注視・認識して色標識により指定される経路上を走行する機能を持っている.このロボットの特徴は制御用コンピュータを搭載して,自己位置を確実に認識する知能が与えられていることであるが,たとえ,制御用コンピュータがなくても,実時間性があり,廉価なシステムが実現できることである.
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