研究概要 |
平成6年3月,名古屋市科学館と近くの高層ビルの地下電気室で相次いで発生したリアクトルの爆発事故は,「6.6kV配電系統から流入した高調波電流が原因」との調査結果が報告されている。このような高調波障害は,電力用半導体素子を使用したパワーエレクトロニクス機器の増加に伴って発生件数も年々増加し,現代社会の新たな"公害"として早期対応が迫られている。資源エネルギー庁は,平成6年9月30日付けで「高調波抑制ガイドライン」を電力・家電業界に通達し,高調波障害の解決に向けて大きく前進した。 交流モータの可変速ドライブシステムや無停電電源(UPS)は,交流電源(50/60Hz)と直流電源とのインターフェース回路として電力変換器を必要とする。しかし,電源高調波規制に対応した従来の大容量電力変換システムでは,1)スイッチング損失が増加する,2)高調波対策機器の価格が高い,3)良好な高調波抑制効果が得られない,などの問題点がある。 本研究は,電源高調波規制に対応した大容量・高効率AC/DC電力変換システムの開発を目的としている。これは,三相ダイオード整流回路と直列形アクティブフィルタを一体化した主回路構成と制御法に特長がある。本研究の成果は,以下のように要約することができる。 1.直列形アクティブフィルタの制御法を開発し,その有効性をディジタルシミュレーションにより確認した。さらに,整流回路のダイオードのアノード・カソード間に接続する「転流コンデンサ」の最適値を明らかにした。 2.直列形アクティブフィルタ(2kVA)を設計・製作し,ダイオード整流回路(20kVA)と一体化して,高調波抑制効果と「転流コンデンサ」の効果を実験により確認した。
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