研究概要 |
本研究は,ダイオードコンバータの力率を受動素子である非線形交流リアクトルによって改善することを目的としている。本年度は,まず角形ヒステリシス特性を有するコアを使用して電流が小さい領域でのインダクタンスに対して大きい領域のインダクタンスが増加する非線形リアクトルを制作した。この場合のインダクタンスの比は,62.6であった。このリアクトルを,コンデンサ入力形単相整流回路の交流側に挿入して力率改善を行った。力率は,非線形リアクトルを使用しない通常のコンデンサ入力形単相整流回路の力率が実験の結果68.1[%]に対して非線形リアクトルを使用した場合は,81.5[%]に改善された。非線形リアクトルを使用すると交流電流の尖頭値が抑制され電流の通電角が広がり波形が正弦波に近づき力率が改善されることが分かった。特に,低次の高調波である第3調波電流と第5調波電流が著しく減少することが分かった。 以上の力率改善効果を理論的に確認するため理論解析とコンピュータシミュレーションを行い次のことを明らかにした。まず,システムの特性を簡潔に表せるパラメータkを明らかにした。このkは,直流出力電圧を負荷抵抗で除した値に比例する量である。kによって直流出力電圧,力率および非線形リアクトルの電流実効値などのコンデンサ入力形単相整流回路の諸特性が簡潔に表せることが分かった。従って,システムの特性と設計が容易になった。この理論解析方法は,コンピュータシミュレーション結果と一致しその妥当性が明らかになった。また,最大力率として,89.4[%]が得られることが分かった。また,システムの設計において,特定の高調波電流を抑制できる事が分かったので,本方式は,単なる力率改善効果のみならず特定高調波電流の抑制方式としても意義があることが分かった。
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