研究概要 |
本研究は,ダイオードコンバータの力率を受動素子である非線形交流リアクトルによって改善することを目的としている。本年度は,まず単相ダイオードコンバータの力率改善を非線形交流リアクトルによっておこなう方式で非線形リアクトルの特性解析と非線形リアクトルを交流側と直流側に使用した場合の力率改善効果を確認した。また,3相ダイオードコンバータの力率改善を非線形交流リアクトルによっておこなった。まず角形ヒステリシス特性を有するコアを使用して電流が小さい領域でのインダクタンスに対して大きい領域のインダクタンスが増加する非線形リアクトルを制作した。このリアクトルを,コンデンサ入力形3相整流回路の交流側に挿入して力率改善を行った。この結果,力率は非線形リアクトルを使用しない通常のコンデンサ入力形3相整流回路の力率が実験の結果52[%]に対して非線形リアクトルを使用した場合は80[%]に改善された。このことより非線形リアクトルを使用する力率改善の有効性]が実験によって確認できた。また,非線形リアクトルを使用すると,電源電流の尖頭値が約1/4に低減し,直流電圧のリップルが1/7に低減し,直流出力電圧は僅かに1.7[%]に低減するのみであることが実験的にあきらかになった。このことは,本方式が,単なる力率改善のみにとどまらずに整流特性の向上があることを示している。また,交流電流の尖頭値が抑制され電流の通電角が広がり波形が正弦波に近づき力率が改善されることが分かった。 以上の力率改善効果を理論的に確認するため理論解析を行った。まず,システムの特性を簡潔に表せるパラメータkを明らかにした。このkは,直流出力電圧を負荷抵抗で除した値に比例する量である。kによって直流出力電圧,力率および非線形リアクトルの電流実効値などのコンデンサ入力形3整流回路の諸特性が簡潔に表せることが分かった。従って,システムの特性と設計が容易になった。また,本方式の最高力率は,93.6[%]まで改善できることが理論的に明確になった。
|