研究概要 |
GaAsをアンモニア中で熱処理することにより、AsとNの置換反応によって結晶表面にGaN層が形成できることを既に見い出した。本研究では、GaAs基板の窒化過程を詳細に検討することにより、GaAs基板の窒化によるGaNバルク単結晶作製の可能性を明確にすることを目的としている。本年度はGaAsの窒化処理におけるGaAs結晶の面方位や窒化処理の温度、時間などの主要パラメータの効果を中心に検討し、以下の成果を得た。 1.GaAs(100),GaAs(111)結晶の窒化挙動の比較 ・GaAs(100),GaAs(111)結晶をアンモニア圧1気圧、800°Cで窒化処理した場合、GaAs(100)結晶の場合は20μm厚のGaN層が形成されるのに対し、GaAs(111)結晶では厚さ1μm程度の薄片状GaNが多数層状になったものが形成される。よって、GaAs(100)結晶の方がバルク単結晶の製作には適している。 ・形成されるGaNの結晶構造はGaAs(100)結晶の場合は閃亜鉛鉱構造とウルツ鉱構造とが混在したもの(閃亜鉛鉱構造が支配的)であるのに対し、GaAs(111)結晶ではウルツ鉱構造単相である。 2.GaAs(100)結晶の窒化におけるGaN層厚の支配要因 ・形成されるGaN層厚は窒化処理温度の増大とともに増大するが、850°C以上では減少する。このGaN層厚の減少はGaAs結晶内部での急激なAsの脱離によるものである。 ・GaN層厚は窒化初期は窒化時間の1/2乗に比例して増大するが、長時間(>20時間)窒化では<111>A方向に伸びた板状GaNの形成のためにGaN層厚の増大は停止する。 3.GaAs(100)結晶の窒化によるGaN層の結晶構造 高速反射電子線回折およびX線回折による結晶構造解析の結果、基板表面に形成されるGaN層は閃亜鉛鉱構造を有するが、<111>A方向に伸びる板状GaNはウルツ鉱構造であることが明らかとなった。この板状GaNの形成抑制がGaNバルク単結晶実現の鍵である。
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