研究課題/領域番号 |
09555098
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
財満 鎮明 名古屋大学, 先端技術共同研究センター, 教授 (70158947)
|
研究分担者 |
池田 浩也 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00262882)
安田 幸夫 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60126951)
|
キーワード | Si / SiO_2界面 / シリコン初期酸化過程 / 高分解能電子エネルギー損失分光法 / 構造緩和過程 / 表面吸着水素 |
研究概要 |
ULSIデバイスの基本的構成要素であるMOSFETは、Si/SiO_2界面における電子輸送現象を利用した素子であるため、Si/SiO_2界面の急峻性及び構造の空間的揺らぎは、スイッチング特性や耐電圧、移動度などのデバイス特性に大きく影響を及ぼす。本研究の目的は、膜中に欠陥などの存在しない30A^^・の完全なSiO_2膜を形成することである。原子スケールで良く制御されたSiO_2構造及びSi/SiO_2界面の実現には、シリコン酸化膜を原子層で形成する技術を確立することが不可欠であり、そのためにシリコンの初期酸化過程及びそれに与える水素や不純物原子の影響を理解することが重要となる。平成9年度は、高分解能電子エネルギー損失分光法(HREELS)を用いて、酸化に伴うSiO_2構造の緩和過程とそれに与える水素の効果について明らかにした。主な結果を以下に述べる。 SiO_2膜のネットワーク構造をHREELS法により調べた結果、その構造緩和過程が、次に述べるように膜厚の増加に伴う場合と熱処理による場合において異なることを見出した。すなわち、酸化の進行に伴う膜厚の増加に対しては、酸化膜は、主としてSiO_4正四面体間の結合角を変化させることにより、内部歪みを解消する。それに対して、熱処理による構造緩和は、SiO_4正四面体内の構造変化、すなわちSi-O結合距離の減少に起因すると考えられる。また、表面吸着水素が酸化膜構造に与える影響は、酸化膜厚2ML以下の初期にのみ観察され、表面吸着水素は酸化膜の構造を緩和させる効果を持つことを明らかにした。 本年度得られた結果は、シリコン酸化膜形成時の酸化膜の構造緩和過程に関する全く新しい知見であり、なおかつ極薄酸化膜のデバイス特性制御を行う際の重要な基礎物性データとなる。
|