研究課題/領域番号 |
09555103
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
川原田 洋 早稲田大学, 理工学部, 教授 (90161380)
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研究分担者 |
山下 敏 東京ガス株式会社, フロンティアテクノロジー研究所, グループリーダー
庄司 習一 早稲田大学, 理工学部, 教授 (00171017)
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キーワード | ヘテロエピタキシャルダイヤモンド / 多結晶ダイヤモンド / FET / ISFET / 電解質水溶液 / 閾値電圧 / ネルンスト応答 / 参照用FET |
研究概要 |
本研究では、電気化学的に耐久性のある水素終端ダイヤモンド表面上にISFETを形成し、これをバイオセンサのトランスデューサとして機能させ、従来のSi ISSFETと比較し、より堅牢なセンサーの試作検討を行うことを目的とする。そこで、ISFETの基本となるデバイスとして、電解質溶液ゲートFETを水素終端ダイヤモンド表面上に作製した。このFETのゲート部は、ダイヤモンド水素終端表面を直接電解質水溶液に曝したもので、溶液とソースの電位差がゲートバイアスとなる。作製されたFETは、ホモエピタキシャルダイヤモンドやヘテロエピタキシャルダイヤモンド基板をもちいた場合のみならず、より成膜が容易な多結晶ダイヤモンド基板をもちいた場合でも、理想的かつ興味深い特性を示した。具体的には以下の成果が得られた。 1.電解質溶液ゲートFETの動作電圧範囲を決定するため、水素終端多結晶ダイヤモンド薄膜のサイクリックポルタモグラムを測定した。その結果、水素終端多結晶ダイヤモンド電極での電位窓は約3Vと、通常の金属電極に比較して極めて大きな値をとることがわかった。 2.電解質溶液ゲートFETを実際に作製し、その静特性を測定した。その結果作製されたFETは、完全なチャネルのピンチオフとドレイン電流の飽和を示し、理想的なFET動作が得られた。また、このFETはオフ時の漏れ電流が極めて少なく、低消費電力デバイスとして期待できる。 3.さらに、電解質溶液ゲートFETの閾値電圧の溶液pH依存性を調査した結果、閾値電圧は溶液のpHに対してネルンスト応答せず、一定の値をとることがわかった。この特筆すべき特徴から、このFETは参照用FETなど様々な応用が考えられる。 本研究において、ホモエピタキシャルやヘテロエピタキシャルダイヤモンドに比較して、作製が容易な多結晶ダイヤモンドにおいて電解質溶液ゲートFETが動作したことは、ダイヤモンドをISFET等に応用する上で非常に大きな成果である。
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