匂い・ガスの動的可視化装置の開発 -ガスビデオカメラの実現-

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09555121
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 森泉 豊栄 東京工業大学, 工学部, 教授 (80016534)
• 研究分担者: 石田 寛 東京工業大学, 工学部, 助手 (80293041) ; 松浦 吉展 フィガロ技研(株), 開発部, 開発1グループリーダ ; 中本 高道 東京工業大学, 工学部, 助教授 (20198261)
• キーワード: 匂い・ガス源探知 / 流れの可視化 / シミュレーション / ガスセンサアレイ / ガスフロー / オプティカルフロー / 半導体ガスセンサ / 風速センサ

研究概要

本年度は、ガスセンサアレイを用いたガス流可視化システムを試作し、得られた動画像からガス発生源の方向を求める実験を行った。従来、このようなシステムを製作するためには試作と評価を繰り返すほか無く、多大な労力を必要とした。そこで、効率よく設計を行うため、初めにシミュレーション装置を製作した。これは風洞内のガス流を煙で可視化する装置であり、ビデオカメラで撮影した画像をワークステーションに取り込む。ガス流中に仮想的にセンサを並べ、過渡応答モデルを用いてその応答をシミュレーションする。ガス流方向の推定にオプティカルフローの拘束方程式を用い、仮想ガスセンサの時定数や風速などの条件を変え、方向推定結果を比較した。その結果、センサの時定数に比べて十分に遅い風速であれば、センサ数25個程度の小規模アレイでも90%以上の高い方向推定正解率が得られた。従来のガス源探知システムは風速センサによりガス流方向を検出しており、微風速環境(10cm/s以下)には適用できなかった。本研究のシステムは風速センサが不要であり、このような環境に有効である。
次に、シミュレーション結果によりアレイサイズとセンサ間隔を決定し、ガスセンサアレイを実際に試作した。通常使われる半導体ガスセンサは、素子加熱用ヒ-タの消費電力が大きい。本研究では多数のセンサを並べて用いるため、ヒ-タをパルス的に加熱して動作するパルス駆動型半導体ガスセンサを用いた。最適なヒ-タの加熱パルス波形を実験により検討した結果、パルス型センサは従来のセンサよりも応答回復速度が速く、低消費電力で発熱も小さいことが分かった。このセンサを用いて5×5個のセンサからなるアレイを製作した結果、微風速場(2.5cm/s)においてガスが流れる様子を可視化できることが確認された。

研究成果

• [文献書誌] T.Yamanaka, H.Ishida, T.Nakamoto and T.Moriizumi: "Analysis of gas sensor transient response by visualizing instantaneous gas concentration using smoke" Technical Digest of the 15th Sensor Symposium. 213-216 (1997)
• [文献書誌] H.Ishida, T.Nakamoto and T.Moriizumi: "Remote sensing and localization of gas/odor source and distribution using mobile sensing system" Technical Digest of Transducers, 97. 559-562 (1997)
• [文献書誌] 石田寛, 中本高道, 森泉豊栄: "生物行動を模倣した匂い源探知ロボット" 電気学会化学センサシステム研究会資料. 35-40 (1998)
• [文献書誌] H.Ishida, T.Nakamoto and T.Moriizumi: "Remote sensing of gas/odor source location and concentration distribution using mobile system" Sensors and Actuators B. (to be published).
• [文献書誌] T.Yamanaka, H.Ishida, T.Nakamoto and T.Moriizumi: "Analysis of gas sensor transient response by visualizing instantaneous gas concentration using smoke" Sensors and Actuators A. (to be published).
• [文献書誌] 山中高夫, 石田寛, 中本高道, 森泉豊栄: "ガスセンサアレイを用いた実時間匂い・ガス流可視化システムに関する研究" 平成10年電気学会全国大会. (発表予定).