研究概要 |
本研究の目的は,様々な種類のカラーメディアがネットワーク上に接続された今日の色再現システムのメリットを生かしつつ,その弊害であるデバイス依存性を解消するための様々な色管理技術を開発することにある.今年度は,まず色再現範囲の圧縮に関する問題を扱った.通常,色再現範囲は自発光デバイスであるCRTディスプレイに比べ,プリンタ等の反射原稿を対象としたデバイスの方が狭いため,CRTディスプレイで再現できた色が物理的にプリンタでは再現できない場合が生ずる.その場合には,そのような色再現範囲外の色をなんらかの基準によってプリンタで再現できる色に変換(圧縮)する必要がある.こうした処理は色再現範囲圧縮と呼ばれ,最も近い色の再現が望まれる.従って,原画像と再現画像の間の「近さ」の基準が必要となるが,単一色間の近さに関する尺度は色差として定義されているものの,画像間の近さに関する尺度は提案されていない.本研究では画像間の近さを視覚系の空間特性を考慮してモデル化し,これを色再現範囲圧縮へ応用した.また,色再現技術をさらに発展させる上で考慮しなければならない基本的かつ重要な色覚現象である色恒常性現象について,心理物理実験を通し,色恒常性の基本的な特性を明らかにするとともに,色覚の二元性についても考察を行った.色恒常性については,未だ明らかになっていない点が数多く残されており,今後とも色恒常性の特性について研究を継続する必要がある.また,こうした基本的な色覚機能が再現されたカラー画像の観察に与える影響を明らかにすることも,色再現技術のさらなる発展に欠かせないものと考える.
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