研究概要 |
本研究の目的は,様々な種類のカラーメディアがネットワーク上に接続された今日の色再現システムのメリットを生かしつつ,その弊害であるデバイス依存性を解消するための様々な色管理技術を開発することにある.再現色のデバイス依存性の原因には,色再現特性の違い,色再現範囲の違い,観察条件の違いの3点を挙げることができる.本研究では,まず,CIELABなとの表色系を中間色表現として導入し,それらとRGB,CMYKなどのデバイス依存色との変換系を構築することで,再現色のデバイス依存性を解決した.特に,プリンタなど減法混色の場合,基本色の配合と再現される色の関係は一般に非線形であるため,その間の変換系は多層ニューラルネットワークにより構築した.また,色再現範囲圧縮の問題に対して,原画像と再現画像の間の「近さ」の基準が必要となるが,単一色間の近さに関する尺度は色差として定義されているものの,画像間の近さに関する尺度は提案されていない.本研究では画像間の近さを視覚系の空間特性を考慮してモデル化し,これを色再現範囲圧縮へ応用した.さらに,観察条件に依存しない色再現について,本研究では,これまでに提案されてきた観察条件を考慮した色再現モデル(カラーアピアランスモデル)の比較を行い,その有効性,問題点を明らかにした.最後に,本研究では,心理物理実験を通し,色恒常性の基本的な特性を明らかにするとともに,色覚の二元性についても考察を行った.色恒常性については,未だ明らかになっていない点が数多く残されており,今後とも色恒常性の特性について研究を継続する必要がある.また,こうした基本的な色覚機能が再現されたカラー画像の観察に与える影響を明らかにすることも,色再現技術のさらなる発展に欠かせないものと考える.
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