縦置き大型円筒磁気シールドシステムの開発一電流重量による低磁界、零勾配磁界の実現

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09555129
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 笹田 一郎 九州大学, 大学院総合理工学研究科, 教授 (20117120)
• 研究分担者: 溝上 恭生 オムロン株式会社, 熊本研究所, 研究主事 ; 園田 敏勝 九州工業大学, 工学部, 講師 (40107842) ; 吉田 啓二 九州大学, 大学院システム情報科学研究科, 教授 (80108670)
• キーワード: 高性能磁気シールド / 磁気シェイキング / 内部磁界均一化 / 磁界補償システム / 縦置き円筒型磁気シールド / 脳磁界 / SOUID磁束計

研究概要

人体規模の縦置き両端開口円筒型磁気シールドの形状は、天井と床面の距離から、円筒長さは高々2.6m程度とせざるをえない。これに人の出入りができる内径を考慮すると円筒長さ/円筒直径の比は3程度となる。シールドを3重構造とするときの各磁気殻の形状設計、テープ状アモルファス薄帯の巻き方向、開口端からの磁界の侵入を抑制する開口端補償法について、数値計算と、縮小モデルにて検討した。
1. 長さ120cm直径50cmの1/2モデルにて、侵入磁界のキャンセルは両端開口部に設置された1対の円電流で、半径方向磁界分布の均一化は、磁気殻外周の軸方向中間位置に別の円電流を流すことによって可能なことを示した。地磁気水平成分を対象とした実験結果では、電流補償前では、シールド比16.4、磁界勾配14μG/cm(軸方向)、78μG/cm(径方向)であったものが、適切な補償によってシールド比128、磁界勾配2.7μG/cm(軸方向)、1.2μG/cm(径方向)へ大幅に向上した。
2. アモルファス薄帯は、製造時に薄帯長手方向に磁化容易軸が形成されており、この方向をシールドしたい磁界の方向に平行にするのが最もシールド効果が高いことを縮小モデルで実験により示した。一方、シェイキング磁界の方向は磁化容易軸方向に限定されないこと、しかし、磁化困難軸に印加する場合は、シェイキング磁界強度を10倍ほど大きくする必要があることを示した。
3. 横方向のみならず、両開口のある軸方向に対しても十分なシールド比が得られるようにするために、横方向磁界のシールドを担うアモルファス薄帯をヘリカルに巻いたヘリカル構造磁気殻と、軸方向磁界のシールドを担う同薄帯を軸方向に配置したアキシャル構造を組み合わせることを提案した。シェイキング磁界の大きなアキシャル構造を最外殻、同磁界の小さいヘリカル構造をその内側、さらにシェイキング磁界の漏洩を防ぐために最内殻としてパーマロイ磁気殻を配置する、3重構造円筒磁気シールドを設計した。両開口端に設置する円電流を79Aとすることによって、地磁気垂直成分は4500分の1に低減されることを数値計算により示した。

研究成果

• [文献書誌] K.Ohshita.I.Sasada.H.Naka.E.Paperno: "A Method expanding uniformly shielded area in a short-length open-end cylindrical magnetic shields" Journal of Applied Physics. Vol.85,No.8-2. (1999)
• [文献書誌] E.Paperno,I.Sasada: "The effect of magnetic anisitropy on magnetic shakig" Journal of Applied Physics. Vol.85,No.8-2. (1999)
• [文献書誌] 大下,笹田,園田: "磁気シールド開口端補償用超低雑音電源" 電気学会マグネティックス研究会資料. MAG-98-109. 23-27 (1998)
• [文献書誌] 大下,笹田: "両端開口短軸円筒磁気シールドにおける軸方向磁界の低減と平坦化" 電気学会マグネティックス研究会資料. MAG-98-110. 7-11 (1998)
• [文献書誌] 中,Paperno,笹田: "2重円筒型磁気シールドにおける軸方向シールド効果と軸径比および透磁率の関係" 電気学会マグネティックス研究会資料. MAG-98-233. 7-11 (1998)
• [文献書誌] 笹田,中,Paperno: "両端開口円筒型磁気シールド" 電気学会マグネティックス研究会資料. MAG-99-8. 47-52 (1999)