研究概要 |
CVD装置を用いて膜厚10nm程度の極薄膜を、コアをむき出しにした構造のマルチモード光ファイバセンサ上に堆積させ、その膜を酸化させたところファイバ中を導波する波長685〜800nmの透過光強度は、時間経過と共に小さくなりほぼ600秒程度で飽和した。これは、膜の酸化に伴うa-Si : HのSiとOの二重結合の発生から増加、飽和に至るまでの経過が"その場"観測されたものだと考えられる。 また、センサの感度を向上させるために、センサ部を長くするか、あるいは細くする必要がある。そこで、従来よりも細い7μm×6μmのコアを持つ埋め込み型の3次元光導波路をセンサとして用いる高感度な測定系を導入し、a-Si : H膜の光物性値の測定を行った。その結果、従来の光ファイバやスラブ導波路をセンサとして用いた場合と同様の傾向をもつ吸収スペクトルが得られた。ここで得られた吸収スペクトルを元にして、導波路上に堆積させたa-Si : H膜の光学エネルギーバンドギャップを求めたところまた、導波路長にかかわらず1.70〜1.72[eV]程度の値が得られた。これは従来の測定法により得られている値とほぼ一致している。また、吸収量が不十分になる事に起因する測定限界は、コア径110[μm]の光ファイバにおいてセンサ長を50[mm]とした場合、a-Si : H膜厚50[nm]であった。導入した測定系では、センサ長が50[mm]のとしたときa-Si : H膜厚3[nm]であったので大幅な感度の向上が図れたことになる。本実験において使用した埋め込み型の光導波路は、従来用いてきたスラブ導波路とは異なり3次元光導波路であるので、これまで行ってきたスラブ近似での,シミュレーションを応用し、等価屈折率法によりa-Si : H膜と導波光の振る舞いの解析を行った。この解析結果と実験結果を用いてa-Si : H膜の屈折率を求めたところ、エリプソメータによって測定した値との間に若干の差が見られた。これは等価屈折率法による近似が不十分である事を示しており、さらに精度の高い有限要素法による解析を現在進めている。
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