研究概要 |
波・流れ共存場における垂下型汚濁防止膜の係留索に作用する張力,流れによる膜の変形,膜構造物周流向・流速を現地観測し,汚濁防止膜の設計に必要な諸定数の検証を行った.また,併せて膜構造物係留のための各種アンカーの把駐力について現場試験を行い,膜構造物の係留に適したアンカーの構造・型式について検討を行った.それらの結果,以下の結論が得られた. 1.暴浪時の波・流れ共存場の係留索張力と流速の現地観測に基づけば,膜構造物が受ける流体力である係留索張力のうち,流れによる静的張力はある流速まで流速の定数倍で示され,波による変動張力は流れの流速の影響を受けることを確認した. 2.流れによる膜構造物の変形特性については,不透過型の場合,流速が0.5m/s程度で膜下端が水面まで吹かれ上がるが,透過型膜構造物の場合,流速が0.3m/s程度まで吹かれ上がりはほとんど認められず,流速が0.8m/s以上になると膜下端が水面まで吹かれ上がることなく,膜高さの15%程度で漸近することを確認した. 3.流れに対する不透過型膜構造物の抗力係数は,流速の増加に伴い減少し,一定値に漸近する傾向を示すことを現地観測により確認し,膜の安定性が問題となる激しい流れと波の共存する場合には,波と流れに対する抗力係数を同じ(1.0程度)と仮定することが可能であることが確認された. 3.シルト地盤でのコンクリートブロックアンカーとサクションアンカーの把駐力の現場試験を行った結果,底面や内部のサクション力が重要な役割を示すことが確認された. 4.係留アンカーが転倒しないような構造として,係留索の接続位置をアンカー側面部に設置することや,アンカー高を低くして底面積を増大させた転倒モーメント軽減型の構造形式が考えられ,その有効性を吟味した.
|