(1)研究対象とする古地図の整理 本研究では、江戸時代における江戸絵図を対象に研究を進めてきた。江戸絵図の精度の向上は明暦の大火(1657年)以降に見られることから、明暦の大火直前に描かれた新添江戸之図(1657年)をはじめ、元禄江戸図(1693)、天保御江戸絵図(1843)、萬延江戸図(1860)を主な対象とした。 (2)基準点となりうる地物の整理 江戸朱引内全域にわたり、古地図と現代図との目視による対照し、ヘルマート変換により確認し、TINの位相を保持している基準点となる地物を93点整理した。 (3)従来の幾何補正手法の適用性検討 幾何補正の従来の常套手段であるヘルマート変換、アフィン変換、多項変換を用い、古地図の幾何補正手法としての適用可能性を確認するとともに、古地図の幾何補正に必要な条件をまとめた。 (4)TINを拡張した幾何補正手法の開発および適用 (3)でまとめられた条件を満足するTINとアフィン変換を統合した幾何補正手法を開発した。この幾何補正手法を用い、(1)で述べた古地図を幾何補正することにより、特定地域の変遷、および当時の空間的状況と地形との関係を考察することが可能となった。また、定量的分析の例として、被災面積の計測を試みた。 これらの応用例をとおし、開発した幾何補正手法の有効性を確認した。 (5)来年度の課題 開発した手法をGISの汎用機能とすべくモジュール化し、これを用いて様々な応用例を試みる。その際、街路の延長距離などを定量化するためには古地図の構成要素をベクター化する必要性が生ずる。また、古地図の不規則的な歪みにより柔軟に対応するため、かつ基準点・基準線のみならず面的な制約条件を取りいれるため、弾性モデルの適用を検討する。
|