近年、フレックスタイム制などの勤務制度が大都市圏鉄道の混雑緩和に寄与すると考えられている。本研究では、その効果を把握するため、東京圏鉄道網を対象に、鉄道輸送力、駅間OD表を入力として、時空間ネットワーク上に利用者を配分することにより、時刻別・距離帯別乗降人員・断面通過人員を算出するモデルを構築する。 本年度は、時空間ネットワークのうち、鉄道ネットワークを簡略化して計算時間の短縮を図ったモデルについて、設計・適用を行った。ここでは、東京70キロ圏を対象として、複雑な鉄道ネットワークを、1本の路線に集約することとし、利用者の経路選択行動を単純化する(ただし、利用者の列車種別選択行動は考慮する)こととした。この際、入力となるOD表(大都市交通センサス)や輸送力データは、都心からの距離帯単位のデータに変換を行い、単純化した鉄道ネットワークに対応することとした。一方、時間については、朝の4時間を10分ごとに表現することとした。リンクコストは、混雑効果や勤務制度に関する効用関数を設定することで、利用者の乗車時刻選択行動を明示的に取り込んだ。 その結果、鉄道ネットワークを簡略化した時空間ネットワークを用いたモデルで、東京圏の各距離帯単位での、需要の時間的分布が10分単位で高い精度で再現された。また将来の勤務制度や輸送力の変化による需要の動向を各距離帯単位で予測することが可能となった。
|