研究課題/領域番号 |
09555171
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
工藤 章 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (00281113)
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研究分担者 |
松井 三郎 京都大学, 環境質制御研究センター, 教授 (90092808)
菅原 正孝 大阪産業大学, 工学部, 教授 (60026119)
藤川 陽子 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (90178145)
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キーワード | 水俣 / 水銀 / 八代海 / 拡散 / 堆積物 |
研究概要 |
平成9年度は、水俣湾底泥の浚渫の環境復旧効果をデータに基づいて検証する目的で、水俣湾近傍海域の2地点で、堆積物コアを採取し、水俣湾からの水銀流出履歴を検討した。堆積物コアの底部では水銀の濃度は約0.1ppmの一定の値を示した。これは今までに報告された日本沿岸海域の底質中水銀濃度のバックグランド値にほぼ等しく、採取したコアは、水俣湾からの水銀流出の開始以前から現在までの採取地点における水銀沈着履歴を保持しているものと判断された。 堆積物コアの分析から、狭い水俣湾(3km^2)への水銀の局在化が、魚介類への高濃度のメチル水銀集積を招き、水俣病の発生をもたらした一因であると考えられた。すなわち、採取されたコア中の水銀濃度の分布プロファイルより、水銀廃水排出口から4kmの地点で、1960年代末から1970年代初め頃にかけて水銀の沈着が始まったことが明らかになった。水銀廃水の水俣湾への放出期間が1932年から1968年であったことと考え合わせると、水銀を含む底泥は水銀の放出の間、比較的よく狭い水俣湾内(3km^2)に封じ込められてきたことになる。 堆積物コア中の水銀濃度から1980年代に水俣湾からの流出水銀の沈着率は、ピークに達し、水俣湾の浚渫工事の影響が考えられた。浚渫工事以後は、水銀の流出は沈静化に向かっている。 以上要するに、水俣湾浚渫工事は、一方で水銀の周辺海域への拡散を促進したが、過去に水俣湾における水銀の封じ込めが水俣病発生の機序となった可能性から勘案して、周辺海域への水銀拡散は必ずしも環境安全上、問題ではないと考えられた。
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