研究概要 |
高層建築物の超高層化が進む中で、その高さが500m程度にまで伸びると大気境界層より上空に頂部が達し、建物の一部が境界層を越えることになる。その場合超高層建物に作用する強風の性状は、大気境界層の内部と境界層を越えた部分とでは力学的な特性が大きく異なっている。一方、そこまで高層建物も高くなると、合理的な構造物を造るためには作用する空気力を制御しながら耐風設計を進めることが避けられない。そこで本研究では、大気境界層を越える超高層の建築物に強風が作用する場合について、風洞実験および数値解析の両面から風荷重の評価を行い、系統的にその特性を明らかにする。その後、大気境界層を越える超高層建築物に向いた空力制振技術を提案し、その耐風性能評価を行うものである。 平成9年度では、上空風の観測資料をもとに、風洞実験法により,上空に温度成層を与え,下部からは,ラフネスブロックなどにより乱れを供給して模擬大気境界層を温度成層風洞内に作成した。乱流特性量を測定して、高さ方向の大気の乱流構造を解明すると共に、大気境界層およびその上空風を風洞実験でシミュレートすることの妥当性を検討した。続いてこの気流を用い、大気境界層より上方にまで頂部を出す角柱モデルの空力特性を明らかにした。 平成10年度は、角柱モデルを対象に断面形状を微妙に変化させ、数値シミュレーションを実施し、精度検証の後に、シミュレーション結果のより詳細なデータを整理して角柱の風圧力及び空力特性を明らかにした。この特性をもとに、境界層の流れの乱流特性を考慮した空力制振に関する技術の提案を行った。空力制振の物理機構は、流れの可視化技術により明らかにされた。本研究のまとめとして、耐風設計を視野に入れ、大気境界層を越える高さを有する超高層建物の空力制振技術の妥当性を検討した。制振が達成されている場合の空力的物理機構に基づき、提案技術の適用範囲を明らかにすることで、超高層建築物の耐風設計を合理化するための技術資料を提示した。
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