研究課題
スリットを鋼板に入れることにより、耐力及び剛性の算定・調整が簡易で変形能力に富む鋼板耐震壁(以下、「スリット入り鋼板耐震壁」と呼ぶ)の開発研究を行ってきた。これまでに耐震壁の単体の試験体に対して実験を行い、靭性ある挙動を得る為に満足しなければいけない条件について検討した結果、スリットに挟まれる鋼板部分(柱状部とよぶ)の幅厚比 (b/t) が大きい場合、耐震壁は面外挙動に伴う不安定な挙動を示すため、実用化が難しいと思われ、スリット入り鋼板耐震壁の耐力および剛性の可能範囲が限定されていた。本年度は、過去の実験試験体に採用した鋼スチフナによる面外変形補剛法以外に、プレキャストコンクリートパネルによる面外補剛方法によって設計可能な範囲の拡張を試みた。b/tおよび面外補剛法(補剛無し・鋼スチフナ・モルタルパネル)を実験変数とし、計11体の試験体に対し実験(施工上、パネルにはコンクリートではなくモルタルを使用した)を行い、耐震壁の面外挙動を考察し、パネルによる補剛法の有効性を検証した。その結果、以下の事が判明している。1.面外補剛がなされていないスリット入り鋼板耐震壁は、柱上部の塑性化が始まるとすぐに面外挙動を始め、b/tが15以上の耐震壁は不安定な挙動をする。2.スチフナによる補剛は、面外変形による柱上部の縮みを抑制し、b/tが15以下の耐震壁の面外挙動を抑制する。3.壁面の面外挙動を抑制するために、パネルによる補剛は有効な面外補剛法であり、この補剛法を用いると、b/tが大きい(20以上)スリット入り鋼板耐震壁の実用化が可能である。
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