ケイ素アルコキシドを出発物質とする相分離を伴うゾル-ゲル法によって、尿素共存および酢酸酸性条件下、共連続マクロ孔構造を持つバルク状に調製した湿潤ゲルを、密閉条件下で加熱することにより尿素を熱分解してアンモニアを生成させ、尿素を含まない同様組成の湿潤ゲルを外部からアンモニア水溶液で溶媒置換した場合と比較して、メゾ細孔の形成挙動を調べた。反応系内の水に対して、完全熱分解で1モル濃度相当量以上の尿素を共存させた場合のpHは、出発組成中の濃度に関わらず約10まで上昇した。常圧下でのメゾ細孔の形成挙動は、同程度のpHで比較すると、水酸化アンモニウム溶液で段階的に置換した場合と同等であり、乾燥時の収縮挙動にも両者の差異は認められなかった。さらに、アンモニア水溶液の代わりに湿潤ゲルを尿素を含む水溶液で溶媒置換して熱分解を行った遍合にも、pHおよび温度のみに依存したメゾ細孔形成が観察された。 次に尿素を出発組成に含むゲルを用いて、100℃以上の水熱条件下での熟成を行った。温度の上昇と共にメゾ細孔の形成は加速された。200℃程度の熟成においては、細孔径は50nmに達し、マクロ孔の領域にまで及んだが、細孔径の増加に伴って細孔容積は減少した。さらに200℃以上では、円筒形の共連続ゲル骨格内部からの溶出成分の顕著な拡散と同表面への析出により、ゲル骨格の空洞化が観察された。しかしマイクロメートル領域に及ぶこのような顕著な構造変化にもかかわらず、水熱条件でしばしば観察されるクリストバライト等への結晶化は観察されなかった。他方、非晶質チタニアゲルおよび酸化マンガン化合物の水熱条件下での処理により、比較的低温でのアナタース微結晶の析出、およびトンネル型化合物の生成が観察された。
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