研究概要 |
本研究では,申請者らが開発した超音波表面処理(Ultrasonic Surface Treatment,UST)技術を発展させ,結晶化を制御することによってガラス表面に非線形光学結晶薄膜を作製し,ガラスと結晶の長所が複合した光学特性の高度化・複合化を図り,マイクロオプティカルデバイスへと発展させることを目差すものである。平成10年度に得られた研究実績概要を以下に示す。 1. ガラス表面での透明で配向した非線形光学結晶化薄膜の作製 ガラスマトリックス組成を最適化し,K_xLi_<1-x>Ta_yNb_<1-y>O_3,Li_2Si_2O_5などの酸化物およびGa_6La_<10/3>S_<14>などの硫化物の非線形光学結晶薄膜の作製を行った。析出させたい非線形光学結晶の粉末を適切な溶媒に分散させた懸濁液を用いてUSTを行った後熱処理することによって,目的とする非線形光学結晶を析出させ,表面結晶化を制御する方法を確立した。種結晶の大きさ,溶媒の種類,超音波の周波数・照射時間等,表面結晶化制御因子について最適化を行うとともに,熱処理条件(温度・雰囲気等)について詳細に検討を加えた。このガラスの表面結晶化法によって,ガラス表面に緻密な透明非線形光学薄膜を作製することができた。 2. 薄膜の線形・非線形光学特性の評価と分析 上記の薄膜について2次非線形光学特性をYカットクオーツをリファレンスに用いて入射角依存性の測定から評価した。ガラスの表面結晶薄膜から第2次高調波の発生が確認された。これらの膜の線形および非線形光学特性およびそれに関係した他の特性についての知見を収集した。 3. 表面結晶化ガラスの光導波路特性の確認 ガラスの表面結晶化によって作製したLi_2Si_2O_5結晶膜について平面光導波特性の評価を試みた。表面結晶化ガラスの光導波特性が初めて確認できた。また,熱処理温度と熱処理時間を変化させることによって平面導波路の厚さを制御し、シングル-モードとマルチ-モードの導波路が得られた。光伝達損失の・評価結果から,損失を1dB/cm以下にすることが可能となり,表面結晶化ガラスをマイクロオプティカルデバイスへ応用する道が広がった。
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