研究課題/領域番号 |
09555194
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
小林 健吉郎 静岡大学, 工学部, 教授 (20153603)
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研究分担者 |
篠崎 充広 住友化学工業株式会社, 基礎科学研究所, 研究員
松島 良華 静岡大学, 工学部, 教授 (40022008)
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キーワード | フオトクロミズム / 無機系酸化物薄膜 / 電場印加 / 光メモリ |
研究概要 |
AINは紫外線発光材料や超高周波数領域のSAWデバイスとして注目されている材料である。この,AINをフォトクロミズムのホスト材料として使用出来るかどうかを検討した。ホスト材料として重要な点は、酸化物透明電極からの電子注入が低いこと、緻密な薄膜の作成が可能であること、光伝導性が高いことなどである。こうした点を明らかにするためITO/AIN/Auの3層構造からなる素子を作成して、薄膜の構造ならびに素子の電気的測定を検討した。 石英基板の上にマグネトロンスッパッタリング法によりITO薄膜を堆積させた。堆積条件はRF power:30W、堆積時間:40分、雰囲気:Ar、真空度:1x10-2 Torr、基板温度:100-400Cで行った。AIN薄膜はAl金属ターゲットを用いて反応性スッパッタリング法により堆積させた。堆積条件はRF power:150-100W、堆積時間:60-300分、雰囲気:Ar+N2、真空度=1x10-2 Torr、基板温度:100-400Cで行った。結晶性はXRDにより評価した。素子の電気的測定はピコアンメータにより測定した。 200C以上の基板温度でAINの生成が認められた。.Fig.1はAIN(002)回折ピークの半値幅を基板温度に対してプロットしたものである。基板温度の上昇に伴って半値幅の減少が認められない。この原因を検討したところ基板温度の上昇により反応室の壁面に吸着していた水分が放出され、AINの結晶性を著しく悪化させていることが判明した。反応室の壁面の加熱により結晶性が改善した。水分の除去を十分に行った後に薄膜作成を行って、基板温度とAINの結晶構造の関係を調べてみると、基板温度300C以上でc軸配向した薄膜が生成することが判明した。 ITO/AIN/Auの3層構造素子のI-V特性から、7-8V程度で数十nAの電流が観測されるが、繰り返し電圧を印加すると15Vでも全く電流が流れなくなった。これはAIN薄膜のボイドなどに侵入していたAl粒子が破壊され、このため高い絶縁性が実現できたものと解釈される。また、ITO電極からの電子注入も完全に抑制されており、ホスト材料として有望であると考えられる。
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