研究分担者 |
宝野 和博 科学技術庁, 金属材料技術研究所, 研究室長
藤森 啓安 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (60005866)
三谷 誠司 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (20250813)
荒木 悟 TDK株式会社, 開発研究所, 研究主任
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研究概要 |
本研究では,アモルファス基板上に,結晶配向性の制御された単結晶状のエピタクシャル膜を成長させる技術を開発し,それを実際に磁性薄膜材料の作製に応用することが目的である。特に,我々がこれまでに研究してきた単原子層積層制御によるFeAu人工格子の合成をアモルファス基板上でも試み,構造や磁気特性を単結晶基板上の場合と比較し,アモルファス基板上でも単結晶基板上と同等の磁気特性が現れる作製条件(シード層,バッファ層の選択も含む)の探索を行う。本年度は,最終年度として,ガラス基板上に実際にFe/Au人工格子の作製を行い,その構造と磁気特性を単結晶MgO基板上に作製した試料と比較した。ガラス基板上には,まず100nmのMgO(001)下地層をイオンビームスパッタ法を用いて蒸着し,超高真空蒸着によりFeシード層(1nm),Auバッファ層(50nm)を作製した後に,人工格子を成長させた。下地層を利用することにより,ガラス基板上にも膜面垂直に(001)配向したFe/Au人工格子を作製することができたが,膜面内は粒径10nm程度の多結晶状で,繊維構造になっていることがわかった。また積層構造に起因するX線回折ピークも,単結晶基板上に作製した試料より弱く,界面の平坦性は劣っている。磁気測定の結果,Fe原子磁気モーメントの値や磁気光学スペクトルの形状には,ガラス基板上に作製した場合も単結晶基板上に作製した場合もほとんど相違がなく,これらの磁気特性は結晶性や界面の平坦性にそれほど敏感ではないことがわかった。一方,垂直磁気異方性は,ガラス基板上に作製した場合の方が明らかに弱く,界面のラフネスに影響を受けていることが示唆された。単結晶基板上に作製した場合と同等の垂直磁気異方性を有する人口格子をガラス基板上に作製するのは,今後の課題として残された。
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