集積回路は高密度化と大規模化が進行中で配線でのジュール熱の低減と信頼性の確保が重要になっている。その課題の一つは、細線化あるいは薄膜化に伴う結晶粒界層および表面・界面層割合の増大への対処と高導電性材料の利用にある。本研究では、実績のあるAl-Si(Cu)を基準材料、高導電率金属のAgを候補材料、純Alを比較材料、また粒界層、表面・界面層での非秩序系の参照材料としてナノ結晶および非晶質合金を取り上げ力学的特性の面から研究を進めている。本年度は(1)Al-si(Cu)薄膜成膜用スパッタ装置の整備をすすめると共に、(2)蒸着法で成膜したAg薄膜の弾性率の膜厚依存性を調べ、純Al薄膜の場合と比較し、さらに、(3)ナノ結晶および非晶質合金の特異な力学的特性を見出した。(2)は3mm厚のSi短冊の一部を0.1mm厚の振動リ-ドに研削・研磨し、水素終端して成膜基板として用い、成膜前後での共振振動数の変化から薄膜の弾性率(ヤング率)を評価するものである。既報告の純Al薄膜の場合、結晶粒が膜厚程度の試料では膜厚が約20nmより薄くなると弾性率は急激な低下を示し、弾性率が低くなっている結晶粒界層の実効厚さの推定範囲は0.3〜2.5nmであるのに対し、本年度の純Ag薄膜では結晶粒径が膜厚と比べて遥かに大きいにも関わらず膜厚が約30nmより薄くなると弾性率が急激な低下を示した。Ag薄膜では表面・界面層がかなりの厚さに亘り弾性率が低下している可能性が高く、Ag薄膜と基板の接着力評価とともに論文として公表予定である。(3)では特異な非線形弾性および通電効果を見出し論文公表したが、(2)で述べた粒界層あるいは表面・界面層でも類似した現象が起きていることを推測させる。
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