電子材料としての金属超薄膜の力学特性評価を進めた。Si(100)に成膜した真空蒸着Ag薄膜は膜厚が〜50nm以下の領域で弾性率の低下を示す。このことは、結晶粒界層の実効厚さが1.5nm程度の大きな値になっておりその弾性率も低下している可能性が高い。従って、Ag薄膜の電子配線への応用では元素添加などによる結晶粒界層の力学的特性の改善を要する。その例としてAg/Pd多層膜について研究を進め、特定の積層周期で弾性率および拡散の活性化エネルギーが共に高くなり熱的にも安定であることを見出した。その原因機構は格子歪ではなく電子系起源であると推測している。この系は電気抵抗が低いにも関わらず高融点金属に近い熱的安定性を示すので過酷な条件下の電子配線材料の侯補と言える。一方、Si(100)に成膜した真空蒸着Al薄膜およびAl-Si(Cu)薄膜では力学物性に及ぼす合金化の効果を調べた。Al薄膜は膜厚が〜10nm以上の領域ではバルクと同じ弾性率を示すが、〜10nm以下では膜厚の減少と共に弾性率は低下を示す。このことは結晶粒界層の実効厚さは0.5nm程度でありその弾性率はバルクの値より低い可能性が高いことを示唆する。一方、Al-Si(Cu)薄膜は膜厚が〜20nm以下の領域で弾性率の低下を示し、結晶粒界層の実効厚さは1nm程度でありその弾性率はバルクの値より低い可能性が高いことを示唆する。これらのことは、Cu添加はAl薄膜中の結晶粒界層の力学的特性の改善に寄与していないこと、換言すれば、Al-Si(Cu)薄膜のEM耐性向上はCuによる粒界拡散の抑止ではなく固溶Cuによるバルク内拡散の抑止であることを示唆する。一方、スパッタ成膜したAl-Si(Cu)薄膜は膜厚が〜20nm以上の領域で顕著な弾性率の上昇を示す。その原因は格子歪であり、緻密な結晶粒界は強いことを示唆する。また、関連する金ナノ結晶の研究から、ある程度緻密な結晶粒界の力学的特性はバルクのそれに近いことが分かった。
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