セラミックス超塑性の研究は、わずか10年程の歴史しか有していないにも拘わらず、近年著しい進歩を見せている。このような進歩は、研究代表者を中心とする、我が国の研究者によって主導されてきている。超塑性に関する最も重要な国際会議ICSAMにおいてもこの事実は如実に立証されている。 研究代表者の実績の最も特徴的な点は、従来の超塑性研究の限界を打破し、新しい展望を開きつつある点にある。従来の超塑性セラミックスの研究は、変形応力とひずみ速度の関係を解析し、活性化エネルギー、応力指数、粒径指数などの変形パラメータの実測値から、変形の律速機構を推定しようとするものであった。これは、金属材料超塑性に関する研究手法をそのまま踏襲するものであり、現象論的解析と呼ばれるものである。この手法は、変形特性の概要を理解するうえで有効なものである。しかし、異なったモデルが同一の変形パラメータを予測するなどもあって、この手法だけで超塑性現象を明らかにすることは困難となっている。本研究では、セラミックスの微細結晶粒超塑性の主要な変形モードが、粒界すべりである点に着目し、粒界構造あるいは粒界における原子間結合に関するミクロな情報から、変形の物理現象を明らかにしつつある。本年度の研究により、この試みは、粒界にガラス相を含むTZPの超塑性現象の解析に極めて有効であることが示された。これらの成果は、超塑性研究にひとつの全く新しい展開をもたらすものである。
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