研究概要 |
近年、軽量性、成形性等の優れた特性を兼ね備えるアルミニウム合金の自動車への適用は、軽量化による燃費向上および環境保護に対して有効な方法として注目されている。しかしながら、自動車へのアルミニウム合金の用途の多様化は、回収時のアルミニウムスクラップの分別をほぼ不可能に近い状態にしている。そのため、種々の不純物が溶湯中に混入する可能性があり、不純物の影響を抑制または改善する方法を確立しなければならない。本研究では、不純物元素としてスクラップより混入する可能性の高いFeを取り上げ、6N01アルミニウム合金中のFeを含む金属間化合物をMnとSrおよびCa添加により微細化、球状化などの形態制御を行い、諸性質の改善を試みた。 6N01アルミニウム合金には主にAl_8(Fe,Mn,Cr)_2SiおよびMg_2Si化合物が晶出し、それらは圧延後には圧延方向に配列し、LT方向の諸性質を劣化させる。FeおよびMnの添加量の増加に伴い、Al_8(Fe,Mn,Cr)_2Si化合物の量が増加するものの、それらは微細に分散する。Caの添加は粗大なAl_8(Fe,Mn,Cr)_2Si化合物を増加させるとともに、小さな角状のCaA1_2Si_2化合物を晶出させるようになる。Srの添加はその化合物を微細化する。時効硬化に寄与するMgのマトリックスへの固溶量は各合金ともほぼ同じで、Siの固溶量はAl_8(Fe,Mn,Cr)_2SiおよびCaAl_2Si_2化合物の晶出に伴い減少するが、GPゾーンを形成するのに十分であるため、各合金とも同様な時効硬化挙動を示す。しかし、MnおよびCa添加量を増やすと、化合物量が増えるため、引張特性は劣化し、0.70%Fe添加合金のLT方向の伸びはJIS規格値を下回るようになる。Srを0.005%まで添加することによりT4処理材の引張強さ、耐力ならびにT6処理材の伸びは向上し、JIS規格値を満足するようになる。
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