研究概要 |
1.研究目的 高度の安全性と信頼性が要求される沸騰水型原子炉(BWR)では,炉心および1次冷却水系のステンレス鋼製機器・配管の応力腐食割れを防止する目的で冷却水への水素注入が実施されるようになってきた。これに伴い,水中の溶存水素(dissolved hygrogen;DH)濃度を精密にin-situ(その場)計測できるセンサが必要とされている。本研究では高温高圧水中で使用できる固体電解質隔膜型DHセンサを開発し,これを用いて高温高圧水用のDH計測システムを作製することを目的とする。 2.研究成果 (1)高温高圧水用DHセンサ特性測定装置の作製: DH濃度のin-situ計測と、DHセンサ用作用電極の特性を評価できる装置を作製した。本装置はDHセンサ,試料電極,電位計測用YSZ-ECPセンサの取りつけた循環式オートクレーブ,センサ出力および電位計測用のエレクトロメータ,ならびに計測制御用パーソナルコンピュータから構成されている。 (2)DH検出電極の開発: PtおよびPd電極をペースト塗布-焼成法ならびにイオンビームスパッタ(IBS)蒸着法によって作製し、水素ガスに対する応答速度と感度、水中における水素電極反応の速度と可逆性、および高温水中における耐食性を調べた。その結果,水素ガスに対する応答速度はIBS蒸着金属が優れるが、応答感度と水素電極特性は電極作製方法に依存しないことが分かった。また,耐食性・耐久性はPtが優れていることが分かった。 (3)Ag-空気基準電極の特性評価: 内部基準電極に用いるAg-空気電極が可逆的酸素電極として機能するかどうかを調べた。Ag-空気|YSZ|Ag電池を構成し、起電力の温度および酸素濃度による変化を測定した結果,粉末Ag電極,およびIBS-Ag薄膜電極が可逆的酸素電極として動作することが分かった。
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